1. サイドオーニングとは?
そもそもオーニングとは
オーニング(Awning)とは、「日よけ」や「雨よけ」を意味する言葉です。
一般的には、住宅の窓や店舗の入り口上部に取り付けられる、可動式の屋根を指します。
車用サイドオーニングの定義
サイドオーニングは、このオーニングを車両の側面(サイド)に取り付けたものです。
車の屋根(ルーフキャリアやルーフレール)に専用のケースを固定します。
そして、必要な時にケースから布(タープ)を引き出し、ポールで固定して屋根を作ります。
カーサイドタープとの違い
サイドオーニングと似た製品に「カーサイドタープ」があります。
どちらも車に連結して空間を作る点は同じです。
最大の違いは、車への固定方法にあります。
サイドオーニングは、車体に「常設」するケースから引き出して設営します。
一方、カーサイドタープは、設営のたびに車体やキャリアに「連結」する必要があります。
設営の手軽さではサイドオーニングが圧倒的に有利です。
| 項目 | サイドオーニング | カーサイドタープ |
| 車体への固定 | 専用ケースで常設 | 設営の都度、連結(吸盤、ロープ等) |
| 設営の手軽さ | ◎ 非常に速い(数分) | △ 比較的時間がかかる |
| 携帯性 | × 車から外せない | ○ 自由に持ち運べる |
| 車両への影響 | 重量増、風切り音の可能性あり | 特になし |
| 価格帯 | 高価(数万円〜数十万円) | 安価(数千円〜数万円) |
2. 【メリット編】サイドオーニングがもたらす 5 つの利便性

サイドオーニングを導入すると、アウトドア活動が劇的に快適になります。
その具体的なメリットを 5 つの側面に分けて詳しく解説します。
メリット 1:圧倒的な設営・撤収スピード
キャンプや車中泊での「設営」と「撤収」は、時間のかかる作業です。
特にタープ(日よけの布)を張る作業は、初心者には難しく感じられます。
しかし、サイドオーニングはこの作業を驚くほど短縮します。
多くの製品は、1 人でも 3 分から 5 分程度で展開が完了します。
撤収も同様に、布を巻き取ってケースに収納するだけです。
「現地に着いたら、すぐくつろぎたい」という願いを叶えてくれます。
メリット 2:強力な日よけ・雨よけ効果
サイドオーニングの最大の目的は、快適な空間を作ることです。
夏の強い日差しを遮ることで、車内温度の上昇を抑えられます。
直射日光を避けて、涼しい日陰で休憩や食事が可能です。
また、急な雨でも慌てる必要がありません。
オーニングの下にいれば、濡れずに荷物の整理や調理を続けられます。
耐水圧(水の侵入を防ぐ性能)が高い生地を使った製品も多く、本格的な雨にも対応可能です。
メリット 3:プライバシーの確保

キャンプ場や駐車場(RV パークなど)では、他の利用者との距離が近い場合があります。
サイドオーニングを展開するだけで、隣の区画からの視線を自然に遮れます。
さらに、「サイドウォール」や「フロントウォール」と呼ばれる別売りの布を追加できます。
これらを取り付けると、三方を壁で囲まれた「個室」のような空間が完成します。
着替えや長時間の休憩も、人目を気にせずリラックスして行えます。
メリット 4:荷物置き場・作業スペースの創出
車中泊やデイキャンプでは、荷物の置き場所に困ることがあります。
車内は就寝スペースとして確保したいため、荷物で狭くしたくありません。
サイドオーニングの下は、絶好の荷物置き場(ラゲッジスペース)となります。
キャンプ用の椅子やテーブル、クーラーボックスなどを置くリビングとして最適です。
雨が降っても荷物が濡れる心配がなく、盗難防止のために車内からも目が届きます。
メリット 5:車との一体感による利便性
サイドオーニングは車と直結しています。
そのため、車のドアを開けてもすぐに屋根の下に出られます。
雨の日に車から降りる際、傘を差さずに荷物を取り出せるのは大きな利点です。
また、車のシガーソケットやポータブル電源から電化製品を使う際も便利です。
オーニングの下で、扇風機や電気調理器具を安全に使用できます。
| メリットの側面 | 具体的な利便性 | 解決できる悩み |
| 時間効率 | 設営・撤収が約 5 分 | タープ設営の面倒さ、時間の浪費 |
| 快適性(天候) | 夏の日差し、急な雨を防ぐ | 暑さによる熱中症リスク、雨による活動の中断 |
| 快適性(心理) | 周囲からの視線を遮る | 他の利用者の目が気になる、着替え場所がない |
| 空間効率 | リビング、荷物置き場が生まれる | 車内が荷物で狭くなる、荷物が雨に濡れる |
| 利便性 | 車から濡れずに出入り可能 | 雨天時の乗り降り、荷物の出し入れの不便 |
3. 【デメリット編】導入前に知るべき 4 つの注意点
非常に便利なサイドオーニングですが、導入前に確認すべきデメリットも存在します。
購入後に後悔しないよう、現実的な注意点を理解しておくことが重要です。
デメリット 1:風に非常に弱い
最大の注意点が「風」です。
サイドオーニングは、構造上、下からのあおり風に非常に弱いです。
布が風を受けると、ヨットの帆のように大きな力がかかります。
最悪の場合、ポールが折れたり、車体に取り付けた基部(ブラケット)が破損したりします。
- 強風時は絶対に使用しない
- 設営時は必ずペグ(地面に打つ杭)とガイロープ(張り綱)で固定する
- 少しでも風が強くなったら、すぐに収納する
- 就寝時や車から離れる際は、必ず収納する
これらの対策を徹底する必要があります。
デメリット 2:車両への影響(重量・燃費・車検)
サイドオーニングは、軽いものでも 10 kg 以上、大型の製品では 30 kg を超える重量があります。
この重量物を車の屋根という高い位置に常設します。
- 重量増:車の重心が高くなり、走行安定性にわずかな影響が出る可能性があります。
- 燃費の悪化:空気抵抗が増えるため、燃費がわずかに悪化する場合があります。
- 風切り音:走行中に「ビュー」という風切り音が発生することがあります。
- 車検の問題:規定のサイズ(特に幅)を超えると、車検に通らない可能性があります。
| 車両への影響 | 具体的な内容 | 対策・注意点 |
| 重量 | 10 kg 〜 30 kg 程度の重量増 | 車の重心が高くなることを意識して運転する |
| 燃費・騒音 | 空気抵抗が増え、燃費悪化や風切り音の可能性 | 製品の形状や設計によって差がある |
| 車検(寸法) | 車幅からのはみ出しが規制対象 | 専門知識のある店舗で取り付ける |
| 車高 | 全高が高くなり、高さ制限のある駐車場に入れない場合がある | 自車の全高を正確に把握する |
デメリット 3:初期費用(価格)
メリットで触れたカーサイドタープと比較して、価格が非常に高価です。
安価なカーサイドタープが 1 万円前後から購入できるのに対し、サイドオーニングは安くても 5 万円以上します。
有名ブランドの製品や、電動式のものになると、20 万円から 30 万円を超えることも珍しくありません。
さらに、取り付けには専門の知識が必要な場合が多く、別途「工賃」が発生します。
「年に数回しか使わない」という方には、コストパフォーマンスが悪いと感じられるかもしれません。
デメリット 4:一度取り付けると外すのが困難
サイドオーニングは「常設」が前提の装備です。
ルーフキャリアやルーフレールに、ボルトやブラケットで強固に固定します。
そのため、日常生活では不要だからといって、簡単には取り外せません。
洗車機が使えなくなる可能性もあります(特にブラシ式の洗車機)。
「キャンプの時だけ付けたい」というニーズには応えにくいため、自分の利用頻度をよく考える必要があります。
4. サイドオーニング徹底比較:種類と選び方
サイドオーニングには様々な種類があります。
自分の車やキャンプスタイルに合った製品を選ぶためのポイントを解説します。
選び方 1:展開方法(手動式 vs 電動式)

オーニングを引き出す方法には、大きく分けて 2 種類あります。
- 手動式(ハンドル式・引き出し式)
- 専用のハンドル(クランク棒)を回して展開するタイプ。
- または、ケースのロックを外し、手で直接引き出すタイプ。
- 構造がシンプルなため、比較的安価で軽量です。
- 故障のリスクが少なく、多くの製品がこのタイプを採用しています。
- 電動式
- スイッチやリモコン操作で、モーターが自動で展開・収納を行うタイプ。
- 非常に高価ですが、設営の手間が一切かかりません。
- キャンピングカーなどの大型車両に採用されることが多いです。
- 車のバッテリーから電源を取る必要があります。
選び方 2:収納ケース(ハードケース vs ソフトケース)

オーニングを収納するケースの素材も重要です。
| ケースタイプ | ハードケース(金属製) | ソフトケース(バッグタイプ) |
| 特徴 | アルミなどの硬い素材で全体が覆われている | ビニールや布製のファスナー付きバッグ |
| メリット | ・走行中の風切り音が少ない ・耐久性が高く、紫外線による生地の劣化を防ぐ ・見た目がスタイリッシュ | ・比較的軽量 ・比較的安価 |
| デメリット | ・高価 ・重量がある | ・走行中に風でばたつく場合がある ・耐久性がやや低い ・内部に水が溜まるとカビの原因になる |
| 推奨 | 車両に常設し、頻繁に長距離を走行する人 | コストを抑えたい人、軽量性を重視する人 |
選び方 3:生地の素材
日よけとなる生地の素材は、快適性に直結します。
主に「ポリエステル系」と「コットン(綿)系」に分かれます。
- ポリエステル系(化学繊維)
- 軽量で、耐水圧が高い(雨に強い)製品が多いです。
- 汚れにくく、乾きやすいのが特徴です。
- ただし、火の粉に弱いため、オーニングの真下での焚き火は厳禁です。
- 遮光性が低いと、夏場は熱がこもりやすい場合があります。
- コットン系(TC 素材など)
- ポリエステルとコットンの混紡(TC)素材が人気です。
- 遮光性が非常に高く、濃い日陰を作ってくれるため涼しいです。
- 火の粉に比較的強く、近くで焚き火をしやすいです。(※真下は不可)
- ただし、重く、濡れると乾きにくい(カビやすい)欠点があります。
選び方 4:サイズ(幅と出幅)
サイズ選びは非常に重要です。
- 幅(車両の長さ方向)
- 車の屋根の長さ(取り付け可能な長さ)によって決まります。
- 2.0 メートル、2.5 メートル、3.0 メートルなどが一般的です。
- 幅が広いほど、オーニングの下の面積も広くなります。
- 出幅(車両から引き出す長さ)
- オーニングをどれだけ遠くまで引き出せるか、という長さです。
- 一般的には 2.0 メートルから 2.5 メートル程度です。
- 出幅が長いほど日陰は増えますが、その分風の影響を受けやすくなります。
| サイズ | 2.0 m 幅 × 2.0 m 出幅 | 2.5 m 幅 × 2.5 m 出幅 | 3.0 m 幅 × 2.5 m 出幅 |
| 面積 | 約 4.0 平方メートル | 約 6.25 平方メートル | 約 7.5 平方メートル |
| 使用人数目安 | 1 〜 2 人(ソロ・ペア) | 2 〜 4 人(ファミリー) | 4 人以上(グループ) |
| 適合車種例 | 軽自動車、コンパクト SUV | ミドルサイズ SUV、ミニバン | 大型 SUV、ミニバン、キャンピングカー |
選び方 5:取り付け方法
サイドオーニングをどうやって車に取り付けるかは、最大の難関です。
- ルーフキャリア(ベースキャリア)に取り付ける
- 最も一般的な方法です。
- 車の屋根に、まずベースキャリア(土台)を取り付けます。
- そのベースキャリアに、サイドオーニングを固定します。
- ルーフレールに直接取り付ける
- 車に純正のルーフレール(屋根の左右にあるレール)が付いている場合。
- 専用のブラケット(金具)を使って、直接レールに固定できる製品もあります。
- レインガーター(雨どい)に取り付ける
- 一部の古い車種や商用バンなどに見られる方法です。
取り付けには専門知識が必要です。
車の安全走行に関わる部分ですので、自信がない場合は必ずカー用品店や専門業者に依頼してください [1]。
5. 活用シーン別:サイドオーニングの便利な使い方
サイドオーニングは、キャンプ以外でも幅広く活躍します。
活用シーン 1:デイキャンプ・ピクニック
日帰りのレジャーで最も手軽に活躍します。
- 公園や河原に到着したら、オーニングを展開。
- すぐに日陰のリビングスペースが完成します。
- タープを張る手間がないため、滞在時間が短くても気軽に設営できます。
- お弁当を食べたり、昼寝をしたりするのに最適です。
活用シーン 2:本格的なキャンプ・車中泊
テントや車中泊と組み合わせることで、快適性が格段に向上します。
- 車をリビング、テントを寝室として使い分ける「小川張り」のようなレイアウトが可能です。
- 雨天時でも、オーニングの下で調理や食事ができます。
- サイドウォールを使えば、悪天候時でも風雨の吹き込みを防げます。
活用シーン 3:登山口や海での休憩
登山やサーフィン、釣りなどの拠点としても役立ちます。
- 登山の前後に、オーニングの下で準備運動や着替えができます。
- サーフィンの後、日陰でボードのメンテナンスや休憩ができます。
- 濡れたウェットスーツやウェアを干す場所としても便利です。
活用シーン 4:スポーツ観戦やイベント
屋外でのイベント参加時にも便利です。
- サッカー観戦や運動会などで、駐車場が観戦場所になる場合。
- オーニングを出して、日差しを避けて快適に応援できます。
- フリーマーケットの出店時など、簡易的な店舗ブースとしても機能します。
6. 安全な設置方法とメンテナンス
サイドオーニングを長く安全に使うためには、適切な設営と手入れが不可欠です。
安全な設営の鉄則:ペグダウン
前述の通り、風対策が最も重要です。
- オーニングを展開し、ポールを立てます。
- ポールの先端、またはオーニング本体に付いているガイロープ(張り綱)を引きます。
- 必ず強度の高いペグ(杭)を使い、地面にしっかりと固定します。
- 風が少しでもある場合は、オーニングが飛ばされない角度にペグを打ちます。
| 風の強さ(目安) | 状況 | サイドオーニングの対応 |
| 弱風(〜 5 m/s) | 葉が揺れる | ペグダウン必須で使用可能 |
| 中風(〜 10 m/s) | 枝が揺れる | 危険。すぐに収納を検討する |
| 強風(10 m/s 〜) | 木全体が揺れる | 使用禁止。 即座に収納する |
警告:
- 設営したまま車から離れないでください。
- 就寝時は必ず収納してください。突風で破損する危険があります。
メンテナンス:カビを防ぐ
オーニングの生地が雨や夜露で濡れた場合の対処法です。
- 濡れたまま収納すると、カビや悪臭の原因になります。
- キャンプ場で乾かす時間がない場合でも、一度は収納して帰宅します。
- 帰宅後、天気の良い日に自宅の駐車場などで再度オーニングを展開します。
- 生地の裏表を、完全に乾燥させてから収納し直します。
定期的な手入れとして、以下の点検も推奨されます。
- 点検項目
- ポールやアーム(骨組み)に歪みや破損がないか
- 車体との固定ボルトに緩みがないか
- 生地に穴や破れがないか
7. まとめ
サイドオーニングは、車の利便性を飛躍的に高めるアイテムです。
設営の手軽さ、日よけ・雨よけとしての機能性、プライバシーの確保など、多くのメリットがあります。
その一方で、風に弱いという最大のデメリットや、価格、車検などの注意点も存在します。
| メリット | デメリット |
| ・設営と撤収が非常に速い | ・風に非常に弱い(要ペグダウン) |
| ・強力な日よけ・雨よけになる | ・初期費用(本体+工賃)が高価 |
| ・プライバシー空間を作れる | ・車両重量が増え、燃費や走行に影響する |
| ・リビングや荷物置き場として活用できる | ・車検や車高制限に注意が必要 |
| ・車からのアクセスが抜群に良い | ・一度付けると外すのが大変 |
自分のキャンプスタイルや車の利用頻度、予算を総合的に検討することが重要です。
もし導入を迷っている場合は、カーサイドタープから試してみるのも一つの方法です。
サイドオーニングの特性を正しく理解し、安全な運用を心がけることで、あなたのアウトドアライフは、これまで以上に快適で豊かなものになるでしょう。
脚注
[1] 取り付けを専門業者に依頼する場合、車両の年式やルーフキャリアの有無によって工賃が変動します。事前に見積もりを取ることを推奨します。


