シェラカップとは? キャンパーの「相棒」と呼ばれる理由
キャンプに少しでも興味があれば、「シェラカップ」という名前を聞いたことがあるはずです。
しかし、その本当の魅力を「ただのコップでしょ?」と誤解している方も少なくありません。
シェラカップは、1個で何役もこなす「万能性」こそが最大の魅力です。
この記事では、シェラカップの基本から、炊飯や燻製といった驚きの使い方まで、そのポテンシャルを徹底的に解説します。
キャンパー必須の「3大理由」

なぜ、ベテランキャンパーほどシェラカップを愛用するのでしょうか。
それには明確な理由があります。
- 驚異の万能性コップ、食器、計量カップ、そして鍋やフライパン代わりにもなります。荷物を極限まで減らしたい登山家から、多機能性を求めるオートキャンパーまで、すべての人に応えます。
- 優れたスタッキング(収納性)ほとんどのシェラカップは、同じ製品や同規格の製品と重ねて収納できます。家族分を揃えても、1個分のスペースに収まるコンパクトさは圧倒的です。
- 直火・焚き火 OK の耐久性金属製(ステンレスやチタン)が主流であり、そのまま火にかけられるタフさが特徴です。冷めたコーヒーを焚き火で温め直す。そんなワイルドな使い方が許されます。
シェラカップの基本スペック
まずは、最も一般的とされる「300ml サイズ」の基本を押さえておきましょう。
| 項目 | 一般的なスペック(例) | 備考 |
| 容量 | 約 300ml | 最も定番のサイズです。 |
| 素材 | ステンレス鋼、チタン | この 2つが主流です。(詳細は次章) |
| 重量 | 約 90~130g(ステンレス) | チタンは約 50g 程度と非常に軽量です。 |
| 目盛り | 50ml / 100ml 刻み | 計量カップとして機能します。 |
| 特徴 | 直火可能、スタッキング可能 |
【徹底比較】素材で選ぶシェラカップ
シェラカップ選びで最も重要なのが「素材」です。
それぞれの特性を知ることで、あなたのキャンプスタイルに最適な 1個が見つかります。
主要 4素材の特徴
現在、シェラカップの主流は「ステンレス」と「チタン」です。
そこに、こだわり派向けの「真鍮」と「アルミ」が加わります。
| 素材 | ステンレス (SUS304) | チタン | 真鍮(ブラス) | アルミ |
| 重量 | 重め | 非常に軽い | 重い | 軽い |
| 熱伝導率 | やや低い | 非常に低い | 高い | 非常に高い |
| 耐久性 | 非常に高い | 非常に高い | 高い | 低い(傷つきやすい) |
| 価格 | 安い | 高い | 高い | 安い |
| サビ | 非常に錆びにくい | 全く錆びない | 錆びる(緑青) | 錆びにくい |
| 調理 | ◎ 万能 | △(焦げ付きやすい) | ○(熱ムラ少ない) | ◎(炊飯向き) |
| 特徴 | 定番。コスパ最強。 | 軽量。金属臭なし。 | 経年変化(味) | 熱効率が最強。 |
素材別のメリット・デメリット詳細
上記の表を、さらに詳しく解説します。
1. ステンレス(最もスタンダード)
- メリット:
- 丈夫で錆びにくく、手入れが非常に簡単です。
- 価格が手頃で、最初に買う 1個として最適です。
- 熱伝導率が適度で、調理にもコップにもバランス良く使えます。
- デメリット:
- チタンに比べると重さがあります。
2. チタン(軽量・登山向け)
- メリット:
- ステンレスの約半分の重量で、圧倒的に軽量です。
- 金属臭がまったくないため、飲み物や食べ物の味を損ないません。
- 強度が高く、直火で焼けても変形しにくいです。
- デメリット:
- 熱伝導率が極端に低く、火が当たった一点だけが加熱されます。
- そのため、炊飯や炒め物には不向きで、焦げ付きやすいです。
- 価格が高価です。
3. 真鍮(育てるロマン)
- メリット:
- 熱伝導率が高く、調理にも適しています。
- 使い込むほどに色が深まり、「経年変化」を楽しめます。
- デメリット:
- 重く、価格も高いです。
- 手入れを怠ると緑青(青サビ)が発生するため、管理が必要です。
4. アルミ(調理特化)
- メリット:
- 熱伝導率が全素材の中で最も高く、熱ムラがありません。
- 炊飯やスープ作りに最適です。
- デメリット:
- 素材が柔らかく、傷や凹みがつきやすいです。
- 近年、アルミ製のシェラカップは製品数が減少傾向にあります。
利用シーン別おすすめ素材

あなたの使い方に合わせて、最適な素材を選びましょう。
| 利用シーン | おすすめ素材 | 選定理由 |
| ファミリーキャンプ | ステンレス | 丈夫で安価。子供が落としても安心。家族分を揃えやすい。 |
| ソロキャンプ(徒歩・登山) | チタン | 1g でも軽くしたい場合に最適。飲み物の味を損なわない。 |
| 調理メイン(特に炊飯) | アルミ / ステンレス | アルミは熱ムラなく炊飯可能。ステンレスも万能に使える。 |
| 焚き火でお酒を楽しみたい | 真鍮 / チタン | 真鍮は経年変化を楽しむロマン。チタンは熱燗にしても金属臭がしない。 |
| 最初の 1個が欲しい | ステンレス | すべての基本。これ 1個で大抵のことはこなせます。 |
【用途別】サイズと形状で選ぶシェラカップ
素材の次は「サイズ(容量)」と「形状(ハンドル)」です。
これらも使い勝手に直結します。
シェラカップ容量別 用途ガイド
定番の 300ml 以外にも、様々なサイズが存在します。
| 容量(目安) | 主な用途 | 特徴 |
| ~ 200ml | おちょこ / 計量カップ | 日本酒の熱燗や、調味料(タレ)を入れるのに便利。 |
| 250~320ml | (定番)コップ / 食器 | 最も汎用性が高いサイズ。コーヒー、スープ、取り皿、0.5 合炊飯に。 |
| 450~600ml | 調理 / ソロクッカー | インスタントラーメン(袋麺)や 1合炊飯に最適。ミニ鍋として。 |
| 900ml ~ 1L | どんぶり / メイン調理 | 「シェラどんぶり」とも呼ばれる。麺類や丼ものの器、調理用ボウルとして。 |
ハンドル(持ち手)形状の選び方
ハンドルの形状は、持ちやすさや調理のしやすさに影響します。
| ハンドル形状 | メリット | デメリット |
| カーブ型(定番) | 指にフィットし、コップとして持ちやすい。 | S字フックなどに吊るしにくい場合がある。 |
| ストレート型 | フライパン感覚で調理しやすい。フックに掛けやすい。 | 飲み物を飲む際にはカーブ型より持ちにくいと感じる場合も。 |
| 折りたたみ型 | クッカー内部に収納可能。圧倒的にコンパクト。 | 構造が複雑な分、耐久性や安定性にやや劣る。 |
【基本編】シェラカップの使い方 5選
シェラカップのポテンシャルを知るための、基本的な使い方 5選です。
1. コップとして(飲む)

最も基本の使い方です。
ステンレスやチタンは熱伝導率が高いため、熱い飲み物を入れるとカップ本体も熱くなります。
特に唇が触れるフチは高温になるため、火傷に注意が必要です。
- 冷たい飲み物: 夏場は結露で冷たさをキープします。
- 温かい飲み物: 焚き火やバーナーで直接温め直せるのが最大の利点です。
2. 食器・取り皿として(食べる)

皿として非常に優秀です。
深さがあるため、スープやカレーなども安心して取り分けられます。
油汚れも金属製なので洗いやすく、衛生的です。
| 用途 | メリット |
| 取り皿 | 大皿料理を各自に分ける際に便利。 |
| スープボウル | 適度な深さがあり、こぼしにくい。 |
| ご飯茶碗 | 炊飯したシェラカップをそのまま茶碗として使えます。 |
| デザートカップ | フルーツやヨーグルトにも最適。 |
3. 計量カップとして(計る)

ほとんどのシェラカップには、内側に目盛りが刻印されています。
「50ml」「100ml」といった単位のほか、「1合」の目盛りがある炊飯に特化したモデルもあります。
料理の際に、わざわざ別の計量カップを用意する必要がありません。
4. おたま・レードルとして(すくう)

大きな鍋で作ったカレーやシチューをすくう「おたま」として使えます。
そのまま自分の食器として使えるため、洗い物を減らすことにも繋がります。
まさに一石二鳥のアイデアです。
5. 小物入れ・インテリアとして(置く)

キャンプサイトでは、散らばりがちな小物を入れるのに便利です。
自宅では、その無骨なデザインを活かしてインテリアとしても活躍します。
- カトラリー(箸、スプーン)立て
- コーヒーのスティックシュガーやミルク入れ
- 多肉植物の鉢カバー
【調理編】火にかける! シェラカップ万能クッカー術
シェラカップの真価は「火」にかけてこそ発揮されます。
直火調理の基本と注意点
- 安定した場所に置く:五徳(ゴトク)や焚き火台の上で、安定した場所を選んでください。
- ハンドルは非常に熱くなる:直火にかけたシェラカップのハンドルは、素手で触ると火傷します。必ず厚手の革グローブや、専用のハンドルカバーを使用してください。
- 空焚きをしない:特にチタン製は熱が一点に集中するため、空焚き状態になるとすぐに変形や破損の原因となります。
5-1. お湯を沸かす(コーヒー、スープ)
一人分のコーヒーやカップスープに必要なお湯(約 150~200ml)を沸かすのに最適です。
大型のケトル(やかん)を出す手間が省けます。
5-2. 炒める・焼く(目玉焼き、アヒージョ)
シェラカップは小さなフライパンにもなります。
| 調理例 | 手順 | コツ |
| 目玉焼き | 1. シェラカップを弱火で熱し、油を引く。 | チタン製は焦げ付くので、ステンレス製推奨。 |
| 2. 卵を割り入れ、好みで水を少量加え、蓋(別売やアルミホイル)をする。 | 蓋をすると白身が早く固まります。 | |
| アヒージョ | 1. オリーブオイルとニンニク、鷹の爪を入れる。 | オイルが少ないと具材が焦げます。 |
| 2. 香りが出たら、マッシュルームやエビなど好きな具材を入れ、弱火で煮る。 | 火力が強すぎると油が跳ねて危険です。 |
5-3. 湯煎する(レトルト、熱燗)
シェラカップにお湯を張り、簡易的な湯煎鍋として使えます。
レトルト食品を温めたり、缶詰を温めたりするのに便利です。
| 湯煎の具体例 | 手順 |
| レトルトカレー | 1. 大きめのシェラカップ(450ml以上)に水を入れ、火にかける。 |
| 2. レトルトパウチを折り曲げて入れ、温める。 | |
| 熱燗(日本酒) | 1. シェラカップに水を入れ、火にかける。 |
| 2. 徳利や日本酒のワンカップを入れ、好みの温度まで温める。 |
【応用編】シェラカップ炊飯(0.5合)完全ガイド
シェラカップがあれば、ソロキャンプに最適な 0.5合のご飯が炊けます。
コツさえ掴めば、誰でもふっくらご飯が楽しめます。
必要な道具
- シェラカップ(300ml サイズ推奨)
- 蓋(リッド):専用品がベスト。なければアルミホイルや小皿で代用。
- 熱源:シングルバーナーや固形燃料。
- バーナーパッド(推奨):チタン製などで焦げ付きを防ぐため、熱を分散させる網。
シェラカップ炊飯 ステップ・バイ・ステップ
| ステップ | 所要時間(目安) | やること | 注意点 |
| 1. 計量・洗米 | 5分 | 米 0.5合(75g)を計り、研ぐ。 | 無洗米を使うと楽です。 |
| 2. 吸水 | 30分~ | 米をシェラカップに入れ、水 100~120ml を注ぐ。 | 夏場 30分、冬場 60分が目安。吸水が最重要。 |
| 3. 炊飯(強火) | 3~5分 | **【蓋をせず】**強火にかける。沸騰まで優しくかき混ぜる。 | ※焦げ付き防止のため、必ずかき混ぜます。 |
| 4. 炊飯(弱火) | 5~10分 | 沸騰したら【蓋をして】、極弱火にする。 | 吹きこぼれに注意。 |
| 5. 音の確認 | – | 水分がなくなり、「チリチリ」「パチパチ」という音に変わる。 | 焦げ臭くなったら、すぐに火を止めます。 |
| 6. 蒸らし | 10~15分 | 火から下ろし、タオルなどで包み、逆さまにして蒸らす。 | 逆さまにすることで、底の水分が全体に回ります。 |
| 7. 完了 | 1分 | 全体をほぐして完成。 |
失敗しないためのコツ
- 吸水は絶対に行う:吸水が不十分だと、芯が残ったご飯になります。
- 沸騰まではかき混ぜる:シェラカップは底が狭いため、熱が集中します。かき混ぜないと、底だけが先に焦げ付きます。
- 素材による難易度を知る:炊飯の難易度は、熱伝導率によって変わります。
| 素材 | 炊飯難易度 | コツ |
| アルミ | ★☆☆(簡単) | 熱ムラがなく、焦げ付きにくい。最強の炊飯素材。 |
| ステンレス | ★★☆(普通) | 底を意識してかき混ぜれば、問題なく炊けます。 |
| チタン | ★★★(難しい) | 熱が一点集中。バーナーパッド必須。焦げやすいので火力調整がシビア。 |
【達人編】シェラカップで簡単「燻製」おつまみ
シェラカップを 2個使えば、簡易的なスモーカー(燻製器)になります。
短時間でできる「熱燻」という方法で、おつまみ作りに最適です。
必要な道具
- シェラカップ(同サイズ): 2個(1個は器、1個は蓋用)
- アルミホイル: シェラカップの内側に敷くため
- 網(ネット): 食材を乗せるため(シェラカップ用が市販されています)
- スモークチップ: ひとつまみ(サクラ、ヒッコリーなど)
シェラカップ燻製(熱燻)の手順
| ステップ | やること | コツ |
| 1. 準備 | 器側のシェラカップの底に、アルミホイルを敷く。 | 汚れ防止と後片付けを楽にするため。 |
| 2. チップ投入 | アルミホイルの上に、スモークチップをひとつまみ(大さじ 1杯程度)置く。 | チップが多すぎると苦くなります。 |
| 3. 網セット | チップの上に網をセットする。 | チップと網が近すぎないように注意。 |
| 4. 食材セット | 網の上に、燻製したい食材(チーズ、ナッツなど)を乗せる。 | 食材の水分はよく拭き取っておきます。 |
| 5. 蓋と加熱 | もう 1個のシェラカップを「蓋」として被せる。 | シェラカップ同士の隙間は、煙の逃げ道として必要です。 |
| 弱火~中火で熱源(バーナー等)にかける。 | ||
| 6. 燻煙 | 煙が出てきたら、火を弱火にして 5~15分待つ。 | 食材と時間によって調整します。 |
| 7. 完成 | 火を止め、数分間余熱で燻したら完成。 | 本体は非常に熱いので火傷に注意。 |
おすすめ燻製食材
- チーズ(プロセスチーズ)
- ウインナー
- ナッツ類
- ゆで卵(うずら)
- かまぼこ、ちくわ
シェラカップの弱点とメンテナンス
万能に見えるシェラカップにも、注意すべき点があります。
よくある失敗例と対策
| 失敗例 | 原因 | 対策 |
| 飲み物で火傷した | 金属は熱伝導率が高い。 | 熱い飲み物はフーフー冷ます。二重構造(ダブルウォール)のモデルを選ぶ。 |
| ハンドルが熱くて持てない | 直火にかけたため。 | 革グローブ、シリコン製のハンドルカバーを装着する。 |
| 炊飯で真っ黒に焦げた | (チタン)熱が一点集中した。(共通)かき混ぜ不足。 | バーナーパッドを使う。沸騰までかき混ぜる。 |
| 倒してこぼした | 底面積が狭く、不安定。 | 安定した平らな場所に置く。 |
焦げ付いた時のお手入れ方法

調理に使うと、どうしても焦げ付きは発生します。
- シェラカップに水を 8分目まで入れます。
- 重曹を小さじ 1杯程度入れ、火にかけます。
- 沸騰したら火を弱め、10分ほど煮立たせます。
- 火を止め、冷めるまで放置します。
- 水が冷めたら中身を捨て、スポンジで軽くこすると焦げが剥がれます。
まとめ:シェラカップは「育てる」万能ギア

シェラカップは、単なるコップや食器ではありません。
飲む、食べる、計る、沸かす、炊く、燻す。
これ 1個で、キャンプのあらゆる「したい」に応えてくれる万能ギアです。
ステンレスの頑丈さも、チタンの軽さも、真鍮の経年変化も、すべてが魅力です。
焚き火で黒くススけていく姿は、あなたと共にキャンプを過ごした「勲章」とも言えます。
ぜひ、この記事を参考にシェラカップの奥深い世界に触れ、あなただけの「相棒」を見つけてください。


